オリンピックにおけるスポーツマーケティングの現状と今後の課題

2020に開催される東京オリンピック。

国内外の企業はスポンサーとして協賛し、開催前から大会を盛り上げています。

多くの企業が4年に1度の祭典をビジネスチャンスと捉え、世界的にブランド力を上げようとしているのです。

しかし、そうした流れで商業化するオリンピックには弊害も生まれています。

そこで、今回はオリンピックのマーケティングの現状と各社の取り組み、そして、今後の課題について紹介します。

オリンピックにおけるマーケティングの役割とは?

Olympic

オリンピックを始めとするさまざまなスポーツイベントや興行では、観戦客を集めたり、スポンサーを獲得したりするためにマーケティングが行われます。

オリンピックにおけるマーケティングの役割についてみていきましょう。

  オリンピックの運営や選手の活躍に重要な役割     

オリンピックなどの世界的な大会を開催するためには、莫大なお金がかかります。

東京都や国が負担する金額も多額ですが、スポンサーからの収入やチケット売上などマーケティングが関わる収入も多いもの。

そのため、大会開催にはマーケティングが必要なのです。

また、選手団の強化にも費用がかかります。

つまり、スポンサー収入は日本選手の活躍にも大きく影響しているといえます。

アクティベーションという新しいマーケティング

従来のスポンサーを含むスポーツマーケティングは、広告によって成立しているパターンが主でした。

しかし、最近は、アクティベーションマーケティングと呼ばれる手法が増えてきています。

アクティベーションマーケティングとは

アクティベーションマーケティングとは、スポンサーとしての権利を最大限に活用したマーケティング活動のことです。

従来のマークやCMを用いたマーケティングのほかに、スポンサーに与えられた権利を効果的に活用して、より効果的な宣伝を行おうというものです。

日本企業が行っているスポンサーアクティベーション

東京オリンピックには、すでに多くの日本企業がスポンサーとして登録されています。

その中で、アクティベーションを積極的に行っているのが、航空会社の「ANA」と「JAL」です。

これらの企業は、「旅客航空輸送サービスカテゴリ」というジャンルでスポンサーになっています。

それぞれが独自のCMを放送し、さらには、アスリートとコラボしたりするなど積極的な動きを見せているのです。

このように、企業がスポンサーとしての権利を十分に活かして様々なマーケティング活動を行うことが、アクティベーションと呼ばれる手法です。

 スポンサーアクティベーションのメリット

スポンサーアクティベーションのメリットとしては、その企業にピッタリのマーケティング活動ができるということが挙げられます。

従来のスポンサーマーケティングでは、選手が着用するアイテムなどにロゴを入れるなどしてアピールすることしかできませんでした。

しかし、積極的な広報活動が可能になったことで、各企業が自分たちの商品やブランドを効果的に宣伝できるようになりました。

その結果、成果にしっかりと結びつくマーケティングができるようになったのです。

スポーツをマーケティングに活用して企業を世界のブランドに

スポンサー企業は、自社のイメージアップや認知度を高めたりするなど、様々な目的でマーケティングを行います。

特にオリンピックなどの世界大会は、自社ブランドを世界に広げるためにこれ以上ない機会であるといえます。

ここでは、実際にスポーツマーケティングを活用している企業の事例を見ていきましょう。

コカ・コーラ社

綾瀬はるかさんのCMでお馴染みの「コカ・コーラ」は、オリンピックだけでなく、ワールドカップなど多くのスポーツイベントにスポンサーとして協賛してきました。

そんなコカ・コーラ社のスポンサー活動は、

  • ローカル
  • グローバル
  • ナショナル

の3つの軸で展開しています。

  • ローカル

コカ・コーラボトリングが地域貢献、法人契約を目指し、国内の地域スポーツなどのスポンサーになっています。

  • グローバル

アトランタ本社が主体的に国際オリンピック委員会や、国際サッカー連盟と契約。その権利を使用し、具体的な活動に結びつける活動をしています。

  • ナショナル

日本コカ・コーラ社が主体となり、全国のアスリートを支援するほか、大会スポンサーとして活躍しているのです。     

このように、世界、国内、地域というようにそれぞれの規模に合わせたマーケティング活動を実行していくのがコカ・コーラ社のスポーツマーケティングです。

・VISA

VISAは、オリンピックの公式スポンサーとして活躍している企業といえるでしょう。

多くのオリンピックでは、クレジットカードの中でもVISAしか使えないことが多くなっていますが、東京オリンピックも例外ではありません。

なぜ、ここまで独占しているのでしょうか。

それは、「オリンピック=VISA」というイメージを作り出し、企業のイメージアップをはかるためです。

現に、オリンピックのパートナーとなる前は、アメックスが国際的に使えるクレジットカードとして高い認知度を誇っていました。

しかし、VISAはオリンピックの1回目のパートナーとしての役割を終えてから、「国際的に使えるカードと言えばVISA」といわれるまでにイメージアップすることに成功したのです。

その結果、VISAカードはオリンピックで使える信頼できるカードとして、日本国内だけでなく世界的にみてもナンバーワンのシェアを誇るカードとなりました。

オリンピックブランドを生かしたマーケティングを

一口にスポーツイベントといっても、オリンピックはかなり巨大なイベントです。     

したがって、オリンピックという独自のブランドを使ったマーケティングも可能となっています。

 オリンピック独自のブランド力は「平和」

どのスポーツイベントにもいえることですが、オリンピックは「スポーツを通した平和」を促す大会です。

この特殊なブランド力を、多くの企業が活用しようとするのは当然の流れであり、特に直近20年では、巨大の経済効果をもたらすようになりました。

 転機は「ロサンゼルス・オリンピック」   

平和の象徴のオリンピックが、本格的に商業化していくきっかけになったのが、ロサンゼルスオリンピックです。

東西冷戦の影響で、大会ボイコットが発生する緊迫した状況において、サマランチ氏がIOC会長に就任。

もともとアマチュアスポーツの祭典だったオリンピックが、プロアスリートの戦いの場になったことで、多くの話題を呼び、オリンピックの価値が高まったことで、色々な方面から注目を集めました。

ロサンゼルスオリンピックでは放送権のビジネス化や、商品化などビジネスとしての要素が取り入れられ、その結果、ロサンゼルスオリンピックは、黒字化を達成しました。

今後の課題

オリンピックに多くのスポンサーが協賛し、経済効果をもたらすイベントとして商業化されていることで、弊害も生まれています。

その1つが、大会そのものがアスリートのためではなくスポンサーやテレビ局のためのものになってきてしまっていることです。

その結果、スポーツ競技会としてでなく、見世物として認知されることも多くなっています。

商業主義によって安定した運営ができて発展している一方で、オリンピックとしての本来の姿とは異なってきているということも忘れてはいけません。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

オリンピックには、多くのスポンサーが協賛し、大会運営や選手の強化をしています。

しかし、その一方で商業的要素が強くなってしまっていることも事実です。

2020年に開かれるオリンピックでは、これらのバランスを上手く取り、より良い大会になることが期待されます。

参考記事一覧


マーケティングの役割(東京2020オリンピック)

五輪に見るスポーツマーケティングの新潮流「アクティベーション」(GLOBIS 知見録)

世界企業とIOCのスポーツマーケティング(宣伝会議)

スポンサー企業は、スポーツの効果をどう見ているのか(Agenda note)

オリンピック史上、最も成功したスポンサーシッププログラムとは(宣伝会議)

スポンサーシップのアクティベーションとは?(SPORT SPORTSHIP Diccionario)

東京五輪チケット、カード決済「VISA」しか使えない大人の事情(Jcast ニュース)

商業化するオリンピック:スポーツ界におけるメディアの影響力(Inaba Lab)